「世界文化遺産」地域連携会議 設立趣意書                  
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省庁、世界遺産議連への提案活動(2015年7月14日:市町村長会)


世界文化遺産の永続的保全と

その持続的活用を目指して

 

 

人類共有の財産である「世界遺産」を百年・千年先の後世に伝えていくことは、

それに関連する地域・管理者はもとより、国における重要な責務でもあります。

 

1 世界遺産の保存・整備・活用・継承のために、十分な防災措置や文化財予算の

確保、省庁間の連携ときめ細かな支援策づくりをお願いいたします。

 

2 諸問題の包括的な解決を目指した、「世界遺産特別法」の制定をお願いいたし

ます。

 

3 2020年に向け、世界遺産と新幹線網の活用による、積極的な外客誘致策を提案いたします。

         

各遺産地別の現況と要望内容

 

姫路城(兵庫県姫路市) 

・世界遺産プロパティ(特別史跡指定地)における文化財保護法に基づく現状変更の禁止と私人の生活や経済活動とのバランスをどう取るか、姫路駅再開発とバッファゾーンの歴史的景観誘導のバランスをいかに取るか、保存管理の体制について、統一的にコントロールする所管がないことが大きな問題となっています。

・世界遺産にふさわしい文化財の新たな活用方法について、モデルケースとなるような新たな手法づくりが必要です。

平成21年から5年計画で大規模改修をおこないました。その際には、工事現場をエレベーターで見学して伝統的技法を見て戴くなど、見学者の維持に取り組みました。また、姫路城の周辺地域には特別史跡が108ヘクタールあり、城を活用した景観誘導を進めようとしています。

 

法隆寺地域の仏教建造物(奈良県斑鳩町)

・法隆寺を中心とした滞在時間型の通過観光であり、法隆寺周辺へ「まちあるき」をする観光客が非常に少なく、地域経済の活性化につながっていません。

・昨年8月に奈良市と世界遺産を活用した周遊観光を連携して目指すべく、「連携誘客宣言」を発表しましたが、昨今、世界文化遺産の登録が続く中、世界文化遺産を有する都市のブランド力の強化のための国内外へのプロモーション費用の支援が必要と考えます。

・民間事業者へ積極的にハード整備を含めた起業支援することで、様々な事業者の進出に期待でき、雇用の創出につなげていきたいと考えます。


古都京都の文化財(京都府京都市・宇治市、滋賀県大津市) 

・平成6年に世界遺産登録された「古都京都の文化財」(宇治市・大津市含め17社寺城)以外にも、これらと同等の価値を有する文化遺産が多数存在するため、いかに継承していくのか、そのために世界遺産に追加登録するのか新規登録するのか等検討することが課題となっています。

・平成19年に新景観政策を実施して以降、より地域の特性を考慮した良好な景観形成に努めています。26年度から歴史的景観を形成する重要な要素である世界遺産、寺社及び近代建築物等その周辺(バッファゾーン等)の景観に関する総点検事業を実施し、今年度も引き続き行います。

・木造建物が多く,「世界遺産を1000年先まで伝える」ためにどう最善を尽くすか。火災・地震対策など文化財防災は、管理者や地元自治体だけでなく、国を挙げての課題です。

・ユネスコ世界遺産条約採択40周年記念最終会合の開催に合わせ、「未来につなぐ世界遺産京都アピール」を策定し、それに基づき普及啓発事業を推進していきます。

 

白川郷・五箇山の合掌造り集落(岐阜県白川村・富山県南砺市)

・国庫補助として茅葺き屋根の葺き替えを文化庁の補助を得、継続的に行っていますが、それらに該当しない景観修繕など小規模事業のほとんどが地元の役割となっています。建物や土地などの指定文化財への補助はあるものの、例えば保全に不可欠な茅場の整備などは補助の対象外です。

・世界遺産に関わる国の補助事業メニューの充実を求めます。




 原爆ドーム(広島県広島市)

・耐震性の確保が最大の課題となっています。

 

嚴島神社(広島県廿日市市)

・世界に類のない海中に建つ社殿建築であり、防災上の大きな問題を抱えています。

また、建造物群の保存修正にも相当額の事業費負担が生じていることから、国庫補助の加算措置などの支援をお願いします。

  

古都奈良の文化財(奈良県奈良市)

・国内外を問わず、日本の世界文化遺産巡りを促すような統一的な観光キャンペーンを展開し、それに対する補助金等の支援を要望したいと思います。

・世界遺産の近くには「ならまち」と呼ばれる歴史的景観を残す町並みがあります。市も町家の保存活動を進めてはいますが、やはり住民にとっても改修費等の問題もあり、プレハブ住宅・駐車場化が進み、古都奈良の風情は失われていっています。市民により積極的に学習機会の提供を行うなどして、「世界遺産のあるまち」という地域に対する誇りを持ってもらい、自然にその町並みを受け継ごうと思えるような仕組みを作っていければと考えていますが、なかなか思うに任せない状況があります。

 

日光の社寺(栃木県日光市)

・世界遺産の継続的な活用による地域活性化が最大の課題です。

・史跡の整備・活用計画に基づいた域内の各種整備事業の調整、並びに世界遺産ガイダンス施設の設置、観光シーズンにおける渋滞対策といった課題もあります。

 ・コアゾーン及びバッファゾーンを保護するための法令が多岐にわたっていることから、関係省庁との連絡調整を円滑に進めることも大きな問題です。

 

琉球王朝のグスク及び関連遺産群(沖縄県)

・国営公園として整備されている首里城と、それ以外のグスクなどにおける事業に著しい格差があります。

・沖縄記念国営公園(首里城公園・海洋博公園)に県内世界遺産(首里城跡以外に今帰仁城跡、座喜味城跡、 勝連城跡、中城城跡、園比屋武御嶽石門、玉陵、識名園、斎場御嶽)等のセンター機能持たせ、沖縄の歴史への理解促進や各世界遺産への誘導ができるようにしていただくことを提案いたします。

・以外に、緩衝地帯での便益施設などへの補助制度の創設、グスクを遠目から見るためのビューポイントの整備、コア内のバリアフリー化などが課題となっています。

  

紀伊山地の霊場と参詣道(三重県・奈良県・和歌山県) 

・平成23年夏の台風被害からの完全復旧が望まれます(建造物周辺・古道修復・アクセス道路等)。

・各省庁それぞれに支援戴いていますが、それらをうまくパッケージにし、世界遺産という横串で刺した、きめ細かな支援策ができればと願っています。例えば、コアゾーンの土地の買上げや修理整備に国庫補助が設けられていますが、補助の対象は200万円以上の事業です。古道の修繕としては石畳の破損や土砂の崩落、倒木などの小規模な破損が多いため、200万円以下の事業がほとんどです。また、古道の両側約50メートルをバッファーゾーンとしており、関係市町村の景観条例などで保護されていますが、国庫補助の対象にはなっていません。


石見銀山遺跡とその文化的景観(島根県大田市) 

・世界遺産登録後の平成19・20・21・22年の4回、見学道や遺産域内の人家に最大3・6トンの落石が発生しました。幸い人的被害はなかったものの、未然に被害を防ぐことを目的としてコアゾーンのうち来訪者が多い地域、人家の密集している地域などを対象に、岩石分布調査を県が実施。調査の結果、落石対策が必要な箇所が22地区あり、県と市が連携して対策事業を行ないつつあります。

・現在、県「治山事業」、県「急傾斜地崩壊対策事業」、国県補助「史跡等保存整備事業」などにより順次対応していますが、長期にわたりかつ多大な予算を必要とすることから、県市のみではその安定的な財源確保が困難であり、世界遺産における国の防災事業の充実が求められます。

・鉱山遺跡としてはアジアで初の世界遺産であると同時に、世界遺産の中に重要伝統的建造物群保存地区などとして、約800人の地域住民が暮らしていることにも価値があり、持続可能な世界遺産とするため、世界遺産の保全と活用に関する包括的な支援が必要です。

 

平泉ー仏国土(浄土)を現す建築・庭園及び考古学遺跡群(岩手県平泉町) 

・観光による東北地方の復興と訪日イメージの回復に、さらに力を入れていただくようお願いします。

・わが国の世界文化遺産の大部分が新幹線などで便利に移動できるという利点を、世界に向けてアピールしていくことが必要です。
 西側や首都
近郊の遺産に加え、平泉は東北新幹線・一ノ関駅からすぐの位置、また白川郷も北陸新幹線・金沢駅から、バスで1時間強の場所にあります。

・世界遺産委員会での決議に伴い発生した報告事務や調査研究、計画策定の遂行に対し、国からのさらなる財政的支援を求めます。



 富士山(山梨県、静岡県)

・富士山の保全だけでなく世界遺産としての景観の保全が重要です。

特に心配されるのは再生エネルギー買い取り制度に伴う、大規模太陽光発電システムの設置です。抑止地域における設置自粛をお願いしていますが、それだけでは限界があります。それらの設置にあたっては地元自治体の同意を得ることを義務づけ、違反者には法的手続きを講じられるような制度づくりが必要です。

・都市計画法や景観法等による規制手法のみでは、事業者に求める景観対策には限界があります。バッファゾーンの良好な景観形成や土地利用を誘導し、世界遺産とその周辺市街地の魅力を向上させるためには、特別法制定による国策としての位置づけと、財政支援を伴う規制及び更なる景観保全を誘導する制度の整備が必要です。

 

富岡製糸場と絹産業遺産群(群馬県富岡市・伊勢崎市・藤岡市・下仁田町)

・富岡製糸場の年間来場者数は2014年度には133万人に上り、来場者の安全を確保しながら100棟近い建造物群の保存整備を進めるには、膨大な費用と年月が想定されます。それらの課題を解決するには、市の限られた予算では限界があります。ついては、富岡製糸場の保存管理・整備活用の着実な執行にあたり、国庫補助金の補助率の嵩上げを要望します(富岡市)

・観光客には世界遺産としての価値を御理解いただいた上で見学してもらう必要があり、案内所等に解説員を配置する必要があります。その養成・雇用・配置に係る補助の充実が必要です。また安全な環境を確保するため現地に警備員を配置する必要があり、これらにかかわる補助充実が不可欠です(伊勢崎市・藤岡市・下仁田町)

・東京オリンピック・パラリンピック時に外国人観光客をおもてなしする観点からも、バファーゾーン整備にかかわる国庫補助金の確保、また案内標識等の周辺環境整備への支援充実をお願いします(4市町共通)




 参考資料1 「世界文化遺産」地域連携会議の活動

参考資料2:「世界文化遺産地域連携会議」設立趣意書

 参考資料3:「世界文化遺産」地域連携会議の構成



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